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鳥取地方裁判所 昭和44年(ワ)191号 判決

原告 岡垣憲一

原告 岡垣静江

右両名訴訟代理人弁護士 君野駿平

右同 松本光寿

被告 三重交通株式会社

右代表者代表取締役 七里三郎

被告 岡田伊三男

右両名訴訟代理人弁護士 花房多喜雄

右訴訟復代理人弁護士 小倉清次

右同 神谷義二

被告 株式会社大阪有線放送社

右代表者代表取締役 宇野元忠

右訴訟代理人弁護士 大槻龍馬

右同 谷村和治

主文

一  被告らは各自、原告岡垣憲一に対し一七六万三三四七円、同岡垣静江に対し一四五万三三四七円及びこれらに対する昭和四四年九月一二日から右各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求はこれを棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告らの、その一を被告らの各負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告ら)

被告らは各自、原告岡垣憲一に対し五九八万二四七三円、同岡垣静江に対し四六八万三四七三円及びこれらに対する昭和四四年九月一二日から右各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

(被告ら)

原告らの請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決。

第二請求の原因

一  事故の発生

1  日  時 昭和四三年七月二六日午後四時五三分頃。

2  場  所 津市東松原町二五二番地の一先路上。

3  事故車  大型乗合自動車(大型バス)(三重二う二六八号)。

右運転者 被告 岡田。

4  態  様 右場所において、訴外岡垣雅章が電柱間に張られた電線(有線放送幹線二六インターホンケーブル。以下同じ)を支えにした梯子に登って、路上に這わせた電線(有線放送用支線)の一端を梯子上部まで引き上げ結線作業に従事中、同所を通りかかった事故車が地上の電線を乗車口下部の鉄骨突出部に引かけて進行したため、作業中の雅章が転落した。

5  傷害の部位・程度 雅章は左側頭後頭部裂骨折、脳挫傷の傷害を蒙り、同日午後七時二三分頃死亡した。

6  身分関係 原告らは右雅章の父母である。

二  帰責事由

1  運行供用者責任

被告三重交通は、事故車を保有し、自己のため運行の用に供していた。

2  不法行為責任

被告岡田は、事故車を時速四〇ないし五〇キロメートルで運転しながら、先行するトラックとの間にわずか七ないし八メートルの車間距離しか保たず漫然と進行したため、トラックが電線を踏越えるまでこれに気付かず、更にこれに気付き前記の如く高所作業が行われていることを現認したにも拘らず危険をさけるため徐行することもなくそのまま進行したため本件事故を発生させたもので、同人には車間距離不保持、前方不注視、徐行違反の過失があった。

3  使用者責任

(一) 被告岡田の運転態度は緊張を欠くもので、使用者たる被告三重交通の教育指導の欠陥を示すものであり、被告三重交通は民法七一五条の責任を免れない。

(二) 被告大阪有線は、自己の事業のため訴外金政司を雇用しているものであるが、同人が被告大阪有線の業務の執行として架線工事をするに際し、交通量の多い本件事故現場において、何らの交通規制の方法を採ることなく、電線を路面に這わせて道路を横断させたうえ、わずか約二ヶ月前である昭和四三年五月二八日同社に入社したばかりの雅章に適切な指導をすることなく梯子を使用して右電線を既設の架線に接続させる作業を行わせた過失により本件事故を発生させるに至った。

同被告は右金の使用者として本件事故により生じた右損害を賠償する義務がある。

三  損害

1  雅章の逸失利益 五三六万六九四六円

雅章は当時二〇才の男子であり、本件事故に逢わなければ少なくとも四三年間は就労可能であり、その間死亡時の収入二万七〇六〇円を下らない収入を揚げ得た筈であり、この間の生活費は右収入の五割とみるのが相当であるところ、同人はこれとは別に更に年間七万五〇〇〇円の賞与(本給の三ヶ月分)を得られた筈であるから、年別ホフマン式計算により年五分の割合による中間利益を控除すれば同人の事故時における逸失利益の現価は五三六万六九四六円となる。

(27,060円×12÷2)+75,000円=237,360円

237,360円×22,611=5,366,946円

2  慰藉料         七〇〇万円

(一) 雅章は、八頭高校を卒業後、独立独行の意気をもって、名古屋高等無線学校に学び、勇んで被告大阪有線に勤務して間もなく、二〇才の若さで本件事故で死亡した。その無念さは測り知りえないもので、その精神的苦痛を慰藉するには三〇〇万円を下らないと云うべきである。

(二) 原告らは、二男である雅章の将来を嘱望して老後を頼りにしていたが、本件事故により同人を失ったため多大の精神的苦痛を蒙った。これを慰藉するには各二〇〇万円を下らないと云うべきである。

3  原告憲一の損害     一三九万円

(一) 葬儀料       一八万円

亡雅章の葬儀のため一八万円を要した。

(二) 石碑代       二一万円

亡雅章の菩提を弔うため右金額を支出して墓石を建立した。

(三) 弁護士費用    一〇〇万円

原告ら訴訟代理人に本件訴訟を委任し、右金額の支払いを約した。

4  損害の填補       三一〇万円

自賠責保険から、原告両名は三〇〇万円の支払いを受け(各自一五〇万円宛充当する)又、原告憲一は外に葬儀費として一〇万円の支払いを受けた。

四  よって、被告らに対し、原告岡垣憲一は五九八万二四七三円、同岡垣静江は四六八万三四七三円及びこれらに対する訴状送達の後である昭和四四年九月一二日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第三被告らの答弁と主張

(被告三重交通、同岡田)

一  請求原因一項1ないし6の事実は認める。

同二項1は認める。同2及び3の(一)は否認する。

同三項1ないし3は全て不知。同4中原告らが自賠責保険金三〇〇万円を受領した事実は認め、その余は不知。

二  被告岡田には過失はなかった。

本件事故現場は津市の繁華街であり、且つ一日一万台以上の自動車が通行する処であるため、自動車は先行車に追随して車の流れに従って進行するのを常態としているところ、被告岡田は事故車を時速二八キロメートルで運転して先行車に六ないし七メートルの車間距離を置いて本件事故現場にさしかかった際路面に引込線らしいものが敷かれていることを発見したが、連なって進行している多数の先行車が何事もなく通過して行ったのを見ており、更に同所には道路交通法所定の危険防止のための標識もなかったので被告岡田は事故車の運行に何らの支障もないものと判断して通過したところ如何なる原因によるのか不明であるが、右引込線が事故車ステップ下部に引っかかり本件事故が発生した。

被告岡田は右の如く進行方向前方を注視しながら事故車を運転していたもので何等の過失もない。

事故現場附近上空高所において被害者が架線に梯子をかけて登り架線工事をしていることは認めておらず、又引込線がその施設とどのように連結されているものか、工事情況を調査確認して進行すべき注意義務はないと云うべきである。

三  被告三重交通は、被告岡田が運転経歴一六年の練達者であり技術正確、性格慎重で謹直であり、無事故表彰も受けておる者であることから市内バス乗務に就かせていたもので、同人の選任につき過失はなく、又被告岡田を含む運転者に常時安全運転につき指導監督を行っており、業務監督につき欠けるところはなかったから使用者責任はない。

又、右の如く事故車運転者岡田に過失がなく、事故車には構造上の欠陥、機能障害もなく、本件事故は被害者及び運転者以外の第三者の過失に基くものであるから被告三重交通には運行供用者責任もない。

即ち、本件事故は相被告大阪有線が架線工事を行うにつき所轄警察署長又は道路管理者の許可も受けず、又公安委員会の定める危険標識も設けずに入社後間もない雅章をして高所作業をなさしめたこと、現場監督金政司が本件事故現場において見張人を置いたり、電線の両端を固く押えて車がこれをひっかけたり跳上げたりしないように措置しなかったうえ、作業員沼口に対し道路南側で電線を押えるよう指示しなかったこと、更に被害者が安全帽、安全ベルト、命綱等の着装不備のまま高所作業したこと等の過失が相まって本件転落事故が発生したものである。

四  被告三重交通は原告らに弔意を表すため香典三万円を贈呈した。

(被告大阪有線)

一  請求原因一項1ないし6は認める。

同二項3(二)は否認する。

同三項1ないし3は争う。4は認める。

二  被告大阪有線は、屋外配線については高所作業を要することから、作業員全員に対し、作業服、作業靴の外保安用ヘルメット、胴綱、命綱等の安全用具を支給し、新規採用者に対しては技術部において資料配布、口頭指導、実地指導等により安全教育を施すよう指示しており、岡垣雅章についても名古屋放送所技術主任であり、本件工事現場の責任者である金政司において作業教育と安全教育を行ってきたばかりでなく、毎週一回のミーティングや毎日の朝礼の際に右同人を含む作業員全員に対しヘルメットの完全着用、胴綱、命綱の使用等について喧しく注意していた。又、被告会社はもとより、同種企業において道路を横断して放送用電線を設置する際は、全て電線を路上に這わせて接続作業を行なうが、この作業中この上を通過する自動車が跳ね上げたり引っかけたりしたことは無数の工事中一度もなかった。従って、右金においてそのようなことを予想せず、路面に放送線を這わせたことが相当の注意を怠ったとは言い得ない。

被告大阪有線には使用者責任を負うべき理由はない。

本件事故は被告岡田が路面に這わせてあった電線に気付きながら徐行を怠った過失により、これを前輪で後方に跳ね上げてステップに引っかけ、そのまま走行を続けたため、電線の一端を持って架線に梯子で登っていた雅章が転落したものである。

三  更に、架線工事に際し、携帯していた胴綱を使用せず、且つ保安帽の紐を締めていなかった被害者雅章にも重大な過失があった。

第四原告らの答弁

一  被告らの主張は全て争う。

二  被害者雅章に保安帽、胴綱及び命綱の着装をしなかった過失があるとしても同人は入社後の期間、訓練不足、指導欠除等からして未だ訓練中の身分であったと考えてよいから、主たる且つ大部分の責任は使用者に帰せられるべきであり、本人の過失は過失相殺されるべき程度の過失に達していないと云うべきである。

このことは、被告三重交通、同岡田との関係でも同様で本件事故の原因である過失の競合は被告ら相互間でその割合を論議されるべきで死者の過失を相殺すべきではないと云うべきである。

証拠≪省略≫

理由

一  本件事故の発生、原告の身分

請求原因一項1ないし6の事実は当事者間に争いがない。

二  被告らの責任、被害者の過失

1  本件事故の状況

≪証拠省略≫を結合すると、本件事故現場は、ほぼ東西に通じる県道(巾員約七メートル、アスファルト舗装の車道及びその南側に巾員約三・五メートルの歩道、北側に巾員約三・八メートルの歩道がある)とこれにほぼ北から直角に交わる市道(巾員約六メートルのアスファルト舗装の車道及びその両側に歩道がある)とが交差する交通整理の行われていない丁字型交差点で、県道の西方約五〇メートルには近鉄名古屋線津新町踏切が設けられており、津市内の繁華街で県道の交通量は多い。

被告大阪有線名古屋放送所技術主任であった訴外金政司は同被告従業員であった沼口仁志、亡雅章を指揮して、右県道北側歩道上空約六・五メートルを東西に架設してある被告大阪有線の放送線幹線から右交差点南側にあるラッキーパチンコ店に支線を引込む作業をなすにあたり、右パチンコ店から路上に放送線を這わせて右交差点を北に直角に横切って幹線下に至り、同所でこれを幹線に丁字型に結合し更に幹線に沿って約一一・七メートル東側にある電柱(中部電力西新町一五五一)まで延張し、同所で支線を幹線に接続しようと考え、沼口をして右パチンコ店東横路地で木製ドラムから放送線を引出させて、その先端を同所にあったネオン・アーチの上をこさせて道路側に垂れさせ、路上を這わせて同交差点北側やや西寄中央附近までのばし、同所において先端が鉤型になっている作業用梯子を幹線に掛けてこれに登っている亡雅章をして右放送線を繰り上げさせたうえ、右放送線を幹線と丁字型に結合する作業にあたらせ、更にその先端を沼口に受取らせ、同人をして前記電柱に登らせて幹線と右放送線との接続作業に当らせ、自らは前記梯子を両手で支える一方足で路上の放送線を踏んでいた。

亡雅章は右作業にあたり保安帽はかぶっていたがアゴ紐は締めておらず、又命綱も使用していなかったし、更に金も右同人がアゴ紐を締めていないことを知りながら注意することもなく命綱を使用しているかどうかにつき確認しないまま作業をさせた。

ところで、被告岡田は事故車を時速約二八キロメートルで運転して前記県道を先行車と六ないし七メートルの車間距離をとって西進中、本件事故現場にさしかかったものであるところ、同人は先行車のストップ・ランプを見ながら、かつ、道路左側を注意しつつ(但し、本件事故発生当時左側を通行する自転車等はなかった)進行した。そして、前記雅章らの結線作業は、その高さ(約六・五メートル)、道路巾員(約七メートル)、色彩(ヘルメット・梯子は黄色、作業衣はねずみ色等)、及び対向車線の通行車輛が少なかったことなどから、運転者として要求される通常の前方注視で、少くとも本件事故発生地点から数十メートル手前から当然視界に入るものであり、そして、先行車が地上の放送線を踏越した時点(約七ないし八メートル手前)で右放送線を認めた瞬間、前記雅章らの作業は右放送線と関連していることを知ったが、先行する各車輛が何事もなく通過して行ったことから何ら危険はないものと考え減速・徐行することなく進行したため、放送線を跳上げてステップ下部突起に引っかけてこれをひきずり前記梯子を転倒させ、作業中の雅章を転落させた。

右放送線は直径五ミリの銅撚線・インターホーン・ケーブルと直径二・六ミリの銅線・メッセンジャワイヤーの二本をビニールで被覆したもので、木製ドラムに捲かれておりドラムを回転させながら放送線を引出せば捲癖は殆んど現れず、道路に這わせた場合も路面に密着し普通乗用車が時速四〇キロメートル、普通貨物自動車が時速三〇キロメートルでこの上を通過しても殆んど跳上るようなことはないが、車輛の重量、速度、タイヤの状態、放送線の状態などの条件によってはこれを跳上げる場合もあり得ること、そしてその場合にはそれまで現われていなかったコイル状になる捲癖が具現化することがある。又、右放送線は七三五キログラム程度の重量には耐えられることが認められる。≪証拠判断省略≫

2  被告三重交通の責任

請求原因二項(一)は原告らと被告三重交通との間において争いがない。

そして、事故車を運転していた被告岡田に次のとおり過失が認められる以上、被告三重交通主張の免責の抗弁事由につき判断するまでもなく、同被告は自賠法三条による責任がある。

3  被告岡田の責任

自動車運転者は、道路上に危険物があるか否か十分注意し、これを認めた場合は歩行者、車輛その他道路を利用している者に対して危害を加えないよう十分安全を考慮して運転すべき義務があると云うべきところ、前記認定事実によれば、被告岡田は路上に放送線が這わされているのを認めながら先行する他の車輛が何事もなく通過して行ったことから危険はないものと軽信して何ら減速徐行することなく進行したため、放送線を跳上げてステップ下部に引っかけ本件事故を発生させたものであって、同人には安全運転を怠った過失があると云わねばならず、民法七〇九条による過失責任がある。

4  被告大阪有線

前記認定事実によれば、同被告の従業員である金が、同被告の業務の執行として放送線の架線工事作業中に本件事故が発生したものであること明らかである。

そして、放送線を路面に這わせる場合、走行する自動車などが何らかの原因でこれを跳上げる可能性が考えられるから、見張人を置いて自動車などの徐行・停止を求め、或いは放送線を固定させるなどの方法を採り、更には作業員が保安帽・命綱を完全に着用・使用しているのを確認して作業をさせ、もって危険の発生を避ける義務があると云うべきところ、右金は前記認定のとおりこれを怠り見張人も置かず、放送線を路面に這わせた後、一端は足で踏み跳ね上らないようにしたが、他端はネオン・アーチから垂らし歩道を経て車道を這わせたままで何等跳ね上らない方法をとらず、更に亡雅章が保安帽・命綱の確実な使用をしているか否かにつき確認することなく作業に就かせたため本件事故が発生したものである。

同被告は、作業員全員に保安用具を支給し、新採用者には技術部で安全教育を施すよう指示しており、毎日朝礼の際保安用具の使用につき喧しく注意し、亡雅章についても現場責任者である金において安全教育をして来た旨主張するが、かかる事実があったとしてもいまだ監督につき相当の注意をなしたとは認められないと云うべきである。

同被告は民法七一五条の使用者責任を免れない。

5  亡雅章の過失

高所作業を行うに際しては、保安帽・命綱など保安用具を使用して作業すべきであるのに、前記認定のとおり雅章はこれを怠り単に保安帽をかぶったのみで架線にかけられた梯子上で作業をしたため転落し、ために左側頭後頭部裂骨折・脳挫傷の致命的傷害を蒙ったものであり、同人の右過失は損害額の算定につき斟酌するのが相当であるところ、右事故の状況その他諸般の事情に照らせば二割の過失相殺をするのが相当と認められる。

三  損害

1  雅章の逸失利益

原告らと被告大阪有線との間では成立につき争いがなく、被告三重交通、同岡田との間においては≪証拠省略≫を綜合すると、同人は当時二〇才の男子で、被告大阪有線に勤務し、一ヶ月平均二万六〇六〇円の給与の外、年間七万五〇〇〇円の賞与が得られたところ、同人の就労可能年数は死亡時から四三年、生活費は収入の五割と考えられるから、同人の死亡による逸失利益を年別ホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると四三八万三三六八円となる(他にこの認定を左右するに足る証拠はない)。

(26,060円×12+75,000円)×1/2×22.611

2  慰藉料

前記の本件事故の態様、年令、生育歴、その他諸般の事情を考慮すると亡雅章、原告ら両名の慰藉料は各一〇〇万円とするのが相当であると認められる。

3  葬儀料及び石碑代

≪証拠省略≫によると、原告憲一は合計三九万九〇〇〇円の費用を支出したものと認められるが(他にこれに反する証拠はない)このうち本件事故と相当因果関係ある損害は二〇万円と認めるのが相当である。

四  損害の填補

原告らが自賠責保険から三〇〇万円を、原告憲一が被告大阪有線から葬儀料として一〇万円を、それぞれ受取ったことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によると、原告憲一は被告岡田から墓石代として五万円を受取ったことが認められ、他にこれに反する証拠はない。

五  弁護士費用

≪証拠省略≫によると、原告憲一は原告ら訴訟代理人弁護士らに本件訴訟を委任するに当り、その報酬として金一〇〇万円を支払う旨約したことが認められるが、本件事案の内容、審理経過、認容額に照らすと原告憲一が被告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る額は三〇万円とするのが相当と認められる。

六  以上の次第で、被告らが原告らに対して賠償すべき損害額は、別紙計算表のとおりとなる。

よって、被告らは原告憲一に対し一七六万三三四七円、同静江に対し一四五万三三四七円及びこれらに対する訴状送達の翌日である昭和四四年九月一二日から右各支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告らの本訴請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 矢代利則 裁判官 菅納一郎 川島貴志郎)

〈以下省略〉

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